「せどり」や「転売」という言葉を聞いたときに、「なんか怪しいことをしている商売でしょ?」とネガティブな印象を持つ方たちも多いと思います。そのなかには、「せどりや転売はクズである」と強く否定する人もいるくらいです。
とはいえ、なぜ、せどりや転売が「クズ」とまで言われなければいけないのでしょうか?
この記事では、せどりや転売がクズと言われる5つの理由について解説しています。果たして、スモールビジネスの代表格と言っても過言ではないせどりや転売は本当にダメな商売なのでしょうか。
これから物販に携わる予定の人たちのお役に立てれば幸いです。
- せどりがクズと言われる理由について考えるきっかけになる。
- せどりを良い面と悪い面の両方から考える材料になる。
せどりや転売がクズと言われる5つの理由
改めて、せどりや転売がクズと言われるのは、どうしてなのでしょうか?
その理由は大きく5つあると考えられます。
せどりや転売がクズと言われる5つの理由
- 理由1 適正価格を超えた値段で販売している。
- 理由2 買占め行為で商品を手に入れられない。
- 理由3 役に立たない情報商材を売りつけてくる。
- 理由4 サラリーマンを見下している。
- 理由5 新しい価値を生み出していない。
ここでは、それぞれの理由について考察していきます。
理由1 適正価格を超えた値段で販売している
第1に、せどりや転売の事業者が適正価格を超えた値段で商品を販売しているため、「クズ」と言われることがあります。
例えば、店舗価格なら10,000円で買えるものにもかかわらず、インターネットで20,000円で売って儲けている人たちもいます。本来の価格よりも2倍や3倍の値段で売られているとわかると、何となく騙されたような気分になるのは理解できることです。
どのような商品でも原価や仕入れ価格を知ると愕然とします。レストランで食べるハンバーグが原価10円だったとして、それを1,000円で売るというのは当たり前のように行われています。
しかしながら、これは何も悪いことではなく、採算を取るためには仕方のないことです。もし、仕入れ値が10円だからといって、ハンバーグ定食を100円で提供しようものなら、レストランはすぐに潰れてしまうでしょう。あくまでも、お客さんが満足して金銭を支払っているのであれば、元々は10円の価値だったとしてもよいのではないでしょうか。
事例として単純に比較することはできませんが、原価や仕入れ値に対して上乗せされる価値の妥当性は顧客の満足度によって左右される曖昧なものだと言えます。極端な話かもしれませんが、生活必需品でもない限り、商品の価格に納得いかないのであれば、買わなければよいだけなのです。
理由2 買占め行為で商品を手に入れられない
第2に、せどりや転売に携わる人たちの買占め行為で商品を手に入れられない人たちが「クズ」と非難することがあります。実際に、Twitterで「転売 クズ」と検索すると、大量のクレームが投稿されています。
たしかに、発売を楽しみに待っていた顧客からしてみれば、キャラクターのグッズやカードなどの商品が転売目的で買い占められてしまうと、店舗価格で購入できないので迷惑に違いありません。その結果、お客さんがコレクターをやめてしまえば、メーカーにとっても中長期的に損失を被ることになるでしょう。
これに関しては、「お一人さま何個まで」という制約を店舗別に設けるなどして、買占めを防止するための戦略を講じる以外にありません。いずれにしても、金儲けのために手段を選ばない姿勢そのものは「クズ」というレッテルを貼られても仕方がないような気がします。
理由3 役に立たない情報商材を売りつけてくる
第3に、役に立たない情報商材を売りつけられた人たちが、せどりや転売を教える人たちを「クズ」と言うことがあります。
実際のところ、「1日で2時間で月収100万円稼げる」といった甘い言葉でスクールに勧誘してくる人たちも少なくありません。とりわけ、お金が欲しい人たちや仕事で疲れている人たちからすれば、夢のような話に思えるでしょう。
しかし、現実はそう単純ではありません。せどりや転売を長期的に安定した収益事業にまで育てるには異なる市場の物価変動を逐一、見極めるリサーチ能力が求められます。裏を返せば、当時は通用していた情報商材が明日にはゴミになるといったことがあり得る世界なのです。
これは「せどり」の業界に限った話でありませんが、「楽して稼げる」なんて都合の良いものがあると思うこと自体が大きな間違いです。とはいえ、経済社会で疲弊している人たちの期待を食い物にして意味のない情報を売りつける行為は、「クズ」と断じられて然るべきものでしょう。
理由4 サラリーマンを見下している
第4に、せどりで独立している人たちのなかには、サラリーマンを見下すような発言を述べる人たちもいます。
例えば、「経済的自立」ができない以上、ずっと資本家に使われ続けるため、人生を損し続けているという主張があります。たしかに、投資家やビジネスオーナーは時間を使うことなく、お金を稼いでいるように見えるため、汗水垂らして働いている人たちからしてみれば「羨ましい存在」なのかもしれません。
しかし、投資家やビジネスオーナーは労働者としての立場にいる人よりも経済的なリスクを背負っているため、精神的に追い詰められている人たちもいます。いざ、自分が同じ立場になってみれば、サラリーマン、経営者、ビジネスオーナー、そして投資家によって、それぞれ違う苦労があることがわかるでしょう。
それにもかかわらず、物販スクールの講師で「サラリーマン=人生を無駄にしている」といったようなことを言うのは、一生懸命に働く人たちへの冒涜であり、現実社会は従業員がいなければ成立しない経営の論理を全く理解していないと言わざるを得ません。おそらく、スクールに入会させるための煽りという可能性もあるでしょう。
その意味では、「クズ」は言い過ぎかもしれませんが、ネガティブな印象を抱く気持ちもわかります。言うまでもなく、脱サラはあくまでも選択肢のひとつであり、人生の正解ではないのです。
理由5 新しい価値を生み出していない
第5に、商品を異なる市場で転がしているだけで新しい価値を生み出していないと批判する人たちもいます。
たしかに、楽天で売っているものをamazonに出したり、メルカリで購入したものをヤフオクに出品したりするのは、商品を単純に移動させているだけに過ぎません。その意味では、何らかの付加価値が生まれているとは言えないでしょう。むしろ、最安値を知らない消費者がいるからこそ、成り立つビジネスなのかもしれません。
しかしながら、その商品を欲しがる人たちがいるから売れていることを踏まえると、必ずしも「クズ」と一括りにして非難できないように思います。すなわち、せどりや転売によって売られた商品だったとしても、結果として役に立つこともあるわけです。
もちろん、本来であればもっと安く購入できたという選択肢を完全に奪うのはよくありません。けれども、それぞれのECで売られている商品の価格を比較していけば、自ずから最安値で購入することは可能です。そうしないのは「知らない」という理由だけではなく、自分が慣れているツールで商品を購入するほうが楽であるという消費者の都合もあるでしょう。
そして、本質的には、商品に対する価値の見出され方は購入者次第で大きく変化するため、「せどりだから価値を生み出していない」と一概に決めてつけて論じることはできないと思います。
せどりや転売は本当にだめなのか?
以上の理由を踏まえたうえで、せどりは本当に「クズ」と言われるほど、だめなことなのでしょうか?
これに関しては、「せどり=クズ」ではなく、あくまでも金儲けのために市場の適正な取引を疎外する人たちが、せどりや転売を悪用してきた結果、社会全体でネガティブなイメージがついてしまったと言えます。
情報の非対称性を利用するビジネスは山のようにあります。そのなかで、事実と異なる商品やサービスを売りつけるのは非難されても仕方がありません。けれども、買った人が満足している以上、需要と供給が成り立つ市場の取引としては必ずしも否定することはできないはずです。
だからこそ、悪しきせどりと転売のあり方を見極めたうえで、それらを市場から追放することが求められています。これは、事業者だけではなく、政府の責任でもあるのではないでしょうか。
インターネットで物を買うことが当たり前となった現代において、物販市場はまだまだ成長の可能性を秘めている大きなマーケットです。改めて、経済社会においてせどりや転売のあり方を考えるべき時代になりつつあるのかもしれません。
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