近年、悪質な転売ヤーに対する消費者の怒りが爆発しています。なかには、個人情報を晒そうと躍起になっている人たちもいて、転売事業者による買占め行為がどれだけ迷惑なことなのかを物語っています。
たしかに、商品の発売を楽しみに待っていた方たちからすれば、売り切れの原因が「ファン」ではなく、「転売ヤー」に起因しているのは納得いきませんよね。しかしながら、嫌がらせも行き過ぎてしまえば、相手から訴えられてしまうおそれがあるので注意が必要です。
この記事では、転売ヤーへの嫌がらせが過熱化している実態についてまとめています。今、求められているのは、「個人攻撃」ではありません。「憎悪」ではなく、冷静な知性から有効な「転売防止対策」を考案することが大切です。
- 転売ヤーに対する嫌がらせの事例がわかる。
- ネット社会で爆発する消費者の怒りについて学べる。
- 嫌がらせの危険性について考えるきっかけになる。
転売ヤーに対する嫌がらせ
はじめに、転売ヤーに対する嫌がらせには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
これに関しては、大きく3種類の嫌がらせが起きていると考えられます。
転売ヤーに対する嫌がらせの種類
- 種類1 個人情報を晒す。
- 種類2 代金を支払わずに放置する。
- 種類3 コメント欄を荒らす。
ここでは、それぞれの内容について説明していきます。
種類1 個人情報を晒す
第1に、転売ヤーの名前、住所、あるいは顔写真などの個人情報を晒すといった嫌がらせがあります。
例えば、Twitterでは、悪質な転売ヤーの個人情報をツイートするアカウントがいくつか存在しています。なかには、個人名や顔写真を掲載しているものがあるため、本格的な晒し行為であると言ってよいでしょう。加えて、5chなどの掲示板でも「悪質転売晒しスレ」が立ち上がっており、匿名の利用者によって転売ヤーの個人情報が記載されています。
元々、ネット社会では実名で報道された犯罪者の個人情報が晒されることが当たり前のように起きており、悪質な転売ヤーに対しても同じような感覚で嫌がらせが横行していると考えられます。
転売ヤーの個人情報を特定して公開する人たちからすれば、「悪いことをしているのだから、制裁されるのは仕方がない」といった正義感に従って行動しているのかもしれませんが、本人の許可なく個人情報を勝手に公開するのは法律に抵触するおそれがあるので注意してください。
相手が悪者だったとしても、社会が許容し得ない悪い手段によって制裁すれば、その次に悪者として裁かれるのは自分自身なのです。
種類2 代金を支払わずに放置する
第2に、転売ヤーの商品に対して購入希望を出しているのにもかかわらず、代金を支払わずに放置するといった嫌がらせがあります。通常、一定期間内に決済が完了しなければ、商品の購入が自動でキャンセルされます。
その仕組みを悪用することによって、「売れたと思っていたはずの商品が売れていない」という状況を作り出せるため、転売ヤーの商売を邪魔できるわけです。1件や2件であれば、大きな打撃を被ることはありませんが、数百件という規模で実行されると、経済的損失が発生する可能性はあります。
例えば、嫌がらせの結果、転売だったしても購入を希望している人たちが特定の転売ヤーから商品を買えない状況が続けば、別の買い方を検討するはずです。すなわち、本来的には売れていたものが売れなくなるので、転売ヤーは在庫を抱える危険性があるわけです。こうした実害があるからこそ、横行している嫌がらせであると考えられます。
種類3 コメント欄を荒らす
第3に、商品ページに設置されているコメント欄を荒らすといった嫌がらせがあります。
例えば、「転売ヤーはクズ」や「他人の不幸で飯を食ってうまいのか」などと非難したり、「ラーメンを作ったら美味しかったです」といった全く商品とは関係ないコメントをつけたりするなどして、商品ページのイメージを悪くするわけです。
実際に、転売ヤーが出品するものでも関係なく購入しようと考えている消費者が荒れたコメント欄の様子を見ると、「この人、なんかやばい人なのかな……」と思って買うのを控えるかもしれません。その結果、商品を売りづらい環境になるおそれがあると言えます。
ネット社会で爆発する消費者の怒り
このような嫌がらせが横行する背景には、転売ヤーの買占め行為によって迷惑を被った消費者の怒りがあります。
例えば、PS5やガンダムのプラモデルなどの新作を楽しみに待っていた人たちからすれば、転売ヤーのせいで商品が手に入らないのは迷惑なことであるに違いありません。さらに、フリマアプリを開いたら、定価よりも高い値段で出品されているわけですから、余計に腹が立つのではないでしょうか。
こうした不満が転売ヤーに対する嫌がらせを正当化する土壌を作り出していくと考えられます。
なお、嫌がらせを実行している人たちのなかには、実害を被っていない方もいるかもしれません。先ほども述べたとおり、ネット社会には「悪人は手段を選ばずに制裁してもいい」という独特の正義感を持っている利用者もいます。世間の不満に対して自らが善行を為しているという自己満足かもしれませんが、単なる暇つぶしで転売ヤーを攻撃している人たちもいるのではないでしょうか。
転売ヤーに対する過度な制裁は危険
とはいえ、個人を主体とする嫌がらせが蔓延るのは、悪質な転売ヤーを取り締まるための法的な枠組みや企業の転売対策が整備されていないからでもあると考えられます。
すなわち、国や企業が転売ヤーの買い占め行為を防止するための具体策を実施しないのだから、「自分たちで転売ヤーを懲らしめるしかない」という報復行為を実行する人たちが出てくるわけです。
しかしながら、上記で紹介した嫌がらせは違法行為として処罰の対象になるおそれがあります。
例えば、個人情報を晒された転売ヤーが損失を受けたとして訴訟を起こした場合、嫌がらせを行っている人たちが裁判で負ける可能性は十分にあると思います。
どんなに転売ヤーが消費者に迷惑をかけていたとしても、彼らが法的に許容される範囲内でビジネスを行っている以上、社会的に裁くことはできません。けれども、だからと言って、個人攻撃による制裁を企てようものなら、結局のところ、損を被るのは嫌がらせを実行する本人なわけです。
したがって、上記で紹介したような過度な制裁を実行するのは極めて危険な行為なので絶対にやめましょう。
嫌がらせではなく転売対策を進めるべき
今、求められているのは「嫌がらせ」による抑止力ではなく、転売ヤーによる買い占めを事前に防止するための合理的な転売対策です。実際に、国や、フリマアプリのプラットフォーム事業者、メーカーや小売店に至るまで、悪質な転売を防ぐための仕組み作りを模索しています。2020年の3月にマスクの高額転売を禁止する法律が制定されたのは記憶に新しいと思います。
そのほかにも、ガンプラの販売元であるバンダイは、転売ヤーの買い占めによって一般消費者が購入できなかった限定商品を再生産することで転売ヤーに対抗しています。
なお、転売ヤーを撲滅するために有用な対策について知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
引き続き、国と企業で役割を分担しながら、転売対策を進めていくことが大切だと思います。そして、消費者はネット社会を個人攻撃の場にするのではなく、転売を防止するためのアイディアを出す場にしたほうがよいのではないでしょうか。三人集まれば文殊の知恵という諺があるように、みんなで協力すれば斬新な転売対策を思いつくかもしれません。
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